Nice to meet you! 「収束」
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一人歩きながら、一倉の表情は険しい。 読み違えたか。 兄貴については満足のいくデータが揃わなかった。わざわざ耳目を集めているとしか思えない派手な振る舞いの弟に比べれば、全く普通の高校生だ。実に真面目な優等生、級友の信望厚い努力家。部活動では神奈川の名門たるチームで正クォーターバックをつとめ、部長の山伏をよく補佐しチームをまとめる。普通で善良なのであれば、こちら側にデータが揃わないというのは決して悪いことではないだろう。――本当にそうならば。 「わざとか?」 兄に注目させないように。兄の素行不良、或いは何らかの後ろ暗いところ(あるとすればだが)を隠すために。 「麗しいな」 反吐が出る。 何しろあれだけのコンビネーションプレイを見せるのだ。兄弟揃えば一層始末に悪い可能性があった。だから早め早めにプレッシャーをかけた。 しかし彼らはまったくおとなしく――慌てたりつまらぬ嘘を付いたりしてボロを出さなかったのはさすがだが――自ら尻尾を出すような愚はしなかった。 そうなってくると、気になるのは兄貴の方だ。疑ってかかるのが仕事ではあるが、兄貴は本当にシロであったのか。よもや弟よりも立ち回りがうまいということもないか。 そして、自分の素性を知った時の金剛雲水の反応は善良かつ一般的な高校生のものではなかった。“警察に目を付けられる”という通常あまり縁のない事実に何らかの心当たりがあるという顔をした。目当てが自分ではなく、お世辞にも決して素行が良いとは言えぬ弟と知って、まことしやかに弟との不仲を言われながら、弟本人が離席を促したのにも関わらず、彼は拒んだ。 教師たちの覚えもめでたい“真面目な優等生”は、一高校生たる彼とは比較にならぬほどの圧倒的な組織力と権限を持つ自分を相手に、立ち向かう意志を見せた。一度も目をそらさなかった。 賞賛に値する。かなりの至近距離からプレッシャーをかけたが、少なくとも彼は取り乱さなかった。耐え抜いた。そのへんの三下では彼に因縁は付けられまい。 「……読み負けたか」 読みすぎたと言ったほうが正確だ。 だが、ならば双子が揃った時に感じた揺るがなさは。あの盤石の正体は何か。 記憶がサーチされ、過去の事例から似たパターンが弾き出される。 この子は悪くないんです。 ――違うな。 あいつは俺のこと何も知らねえよ。 ――これも違う。もっと原初の、もっと単純な――もっと「近い」。 無意識に脳が記憶の検索範囲を広げる。 さらと脳裏に優しい長い髪が揺れた。 おとうさん、舌足らずの呼ぶ声。 「――」 思い当たる。たまらず男は吹き出した。 「ハッ!何だ、そうか!」 俺が守るのだと。 傷つけさせるものかと。 それだけだ。勝算など考えていない。比彼の戦力差などはなから頭にない。 一番敵にしてはいけないタイプだ。喧嘩は負けてはいけない方が必ず勝つ。すなわち彼は、未成年の高校生にすぎない彼は、天賦の才を持って生まれてきた弟と比べ続けられてきた兄は、彼が生まれた頃から警察官をやっている自分にすら敗北することはないだろう。 吼えるか、兄貴。未だ何の力も持たぬ何者でもない身で、その小さな牙を剥いて、「弟に手を出すな」と。その胆力! ぞわり。震えた。 「……いいねェ。たまらんねえ!」 「お疲れ様です」 「おう」 立派な門の陰で控えていた佐伯を従え、男は悠然と階段を下りていく。 「……非番だなんて嘘まで付いて」 「仕事で来たって言ったら会わせてくれないだろうしさ。俺だって鬼じゃない、若者の前途に傷を付けたい訳じゃない」 嘘付け、鬼。と内心でつっこんでおく。しかし本心ではあるのだろう。前途有望な、彼の喧嘩相手になりえるような若者なのだ。それをこんな早いうちから潰したいわけがない。むしろ潰れられては困るのだ――嫌なのだ。後々自分が楽しめなくなるから。 ――鬼だ。身勝手すぎる。それでいいのか、警視庁。 「満足しましたか」 「大当たりの部類。まだちょっと若いがな。もう少し熟成させたらさぞかしだろう。是非二人セットで楽しませて貰いたいもんだな」 「二人?兄もですか」 意外そうに部下が聞き返す。一倉は機嫌良く頷いた。 「会ってみないとわからんもんだなあ。兄貴、良いぞあれは!あの冷静なQBがあんな無鉄砲丸出しで向かってくるなんて。フィールドの中と外では別人だな」 「……好きですね、そういうの」 「実に可愛らしくていい!兄弟愛を見せて貰った」 神龍寺学院の正面階段横に付けた車に戻り、男は自ら無造作に後部座席のドアを開け、ちっちゃな補佐役は運転席に乗り込む。 「兄貴ってのは俺には厳密にはいないんだが、いいもんだな」 「お義兄さん悲しまれますよ?泣きながら奥様に愚痴ってかれたそうですね、正和がかまってくれないと」 「あの人は時々何考えてるかわからなくて怖いんだ」 さすが一倉正和が地上で唯一頭の上がらない女の兄。良い人なのだが計り知れない。 「来年の春大会見に行きたいから調整してくれない?」 「仕事して頂きますよ」 無理とは決して口にしない、ある意味非常に前向きに諦めの悪いこの部下が、一倉は気に入っている。よく似ているのだ。だから使いやすい。 「了解♪」 廊下にしつらえられている喫煙所で、久しぶりに会った彼らは何気なく連れ煙草としゃれ込んだ。話題は共通の知人にして上司だ。 「しっかしオメー、アレだよな。課長の物好きにも参るぜ、なあ?」 「おお、俺もあのムダな行動力は凄えと思う。ありゃ明らかに捜査一課長のフットワークじゃねえ」 「全く、何考えてやがるんだ。……まあ奴ならミスは無いとは思うが、もし仕留め損ねたらあの坊主学習しちまうじゃねえか――」 男三人が揃って沈黙した。三筋の煙草の煙だけがたゆたう。 ふ、と煙を吹き散らして、がたがたと木島が立ち上がる。工藤も腰を上げる。 「……悪ィ。用事思い出した、報告書書かねえといい加減浅尾が泣くわ」 「俺も帰るか……。新宿が俺を呼んでるぜ」 あばよ丹波また飲もうや、と適当に言い置いて、さっさと二人は去っていく。 一人座ったまま残された丹波がわなわなと肩を震わせる。 「あの野郎……あの野郎、最初っからそのつもりだったな!?」 してやられたッ、と歯噛みする丹波の罵声が廊下に響いた。 滑らかに走っているセダンの中で、彼らは言い合う。 「本物を間近に見て実際に接する以上の経験はない。彼ほどのセンスの持ち主なら尚更です。鍛えてやるつもりだったんでしょう?貴方の愛はわかりづらい、誤解されますよ」 「誤解して理解しあってこそ人生だろ?大丈夫だ、彼は理解する。思っていたよりずっと素直でいい子だった。何より賢い」 「本当に気に入ったんですね……」 「だから最初から言ってたろ。俺ウソ付かないあるよ」 「中国人あるある言わないあるですよ。胡散臭いですねえ」 課長の冗談に付いてこられるようになってしまっている自分がちょっと悲しくはあるが、ある意味では楽しい。これも自己防衛機能というものであろう。 「ちょっと時間あるだろう。青山回って美味いお茶でもご馳走になろうじゃないか。お前も来い、偶には顔を見せて差し上げろ」 言外に時間を作れと命じられる。一秒未満でスケジュールを算定し直し、佐伯は頷く。 「……了解しました」 “青山”と言っても港区でも紳士服でもない。さる人物を指す隠語だ。課長はさっさと携帯を耳に当て、まったく紳士のように話し出している。 「ご無沙汰しております、清春さん。一倉です。これから伺いたいんですが今日はどちらに?ええ、面白い話をお聞かせできますよ。貴女の好きそうな――」 |
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徹底的に記念企画。人はそれを趣味と呼びます。ラストにちゃんとラブサムが流せそうで驚きました。マトモに出るのは初めての工藤さんと微妙にクラスチェンジしているあの人に愛。そしてナーガのおっかけがまた一人(うへえ)。
課長が阿含を見初めて(えー)から雲水君に惚れるまでの話……? アイシールド21より金剛阿含、金剛雲水、細川一休、仙洞田寿人、西蔵乱麻。 踊る大捜査線(スピンオフ含む)より一倉正和(小木茂光)、室井慎次(柳葉敏郎)、新城賢太郎(筧利夫)、工藤敬一(哀川翔)、木島丈一郎(寺島進)、浅尾裕太(東根作寿英)、もぐらこと龍村(真木蔵人)。 二千年の恋より佐伯健志(宮沢和史)。 TEAMより丹波肇(西村雅彦)、名前のみ風見勇介(草ナギ剛)。 一倉妻、一倉娘、一倉義兄、青山の彼女こと清春さんはオリキャラです。現時点で当サイトおそらく最強の女。趣味です。いやー楽しかったァ! 踊るもわかると言ってくれたナーガレディの皆様、代表してアキさん浦島さんカッツさん(一倉好き室井格好いい新城カワイイと言ってくれて嬉しかったッス!)。 ブリーチ繋がり&ナーガ繋がり、あんな一倉に応援メッセージを下さったマッグパイさん。 長いことお付き合い下さってる踊るスキーの皆様。 ジャンルを越えた腐れ縁な友人ら。 超SUKI!ちょっとでも面白がっていただけたなら幸いです。 |
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